2023 年4 月24 日、東洋大学情報連携学部(以下、INIAD)は、全学生にGPT-4 を使わせるためのAI 利用教育システムを開発・導入しました。
詳細
INIAD(学部長・坂村 健)は新学期より、OpenAI が提供するChatGPT の上位コア技術である生成系AI モデルであるGPT-4 を活用した新たな教育システム「AI-MOP」(AI Management and Operation Platform:AI 管理運用プラットフォーム) を開発し導入しました。これにより、学生がGPT-4 を使って自分の考えを深め、より高度な思考力を身につけられるように、適切な環境・指導・教材の提供を積極的に進めていきます。
このシステムの目的は、生成系AI を利用した自学自習を可能にして学生たちの教育効果を高めること、また 生成系AI のAPI をプログラミングで利用できるようにして、生成系AI 利用したシステム開発のスキルを学 ばせることです。
このAI-MOP では、学生がChatGPT を利用して質問を解決したり、対話を繰り返して理解を深めたり、ま たAI 利用の研究や課題に取り組むことができます。また、教員は、学生の利用状況を追跡し、学習の進捗を 確認できます。
INIAD では、学生と職員のコミュニケーションプラットフォームとして、全員がSlack を使っています。 AI-MOP により、学生が直接ChatGPT を使うのではなく、Slack のボットの形でGPT-4 にアクセスできる ようになります。
これにより個人や部門単位でのAI 利用量の管理や制限などができるようになっています。また、プログラミ ングでの利用では、無限ループなどバグによりアクセスが異常に増大した場合を検出すると通信遮断してコ スト爆発を防ぐ仕組みも実装しました。
さらに、送った内容はOpenAI のサーバーで保管されない(学習にも利用されない)ようになっているた め、安全に利用できます。
現在はGPT-4 のみを利用していますが、システム的には、今後出てくる多様な生成系AI を取り込んで、並列して使えるプラットフォームになるようにデザインされています。この柔軟なプラットフォームにより、 最新のAI 技術を迅速に取り入れ、学生たちに最適な学習環境を提供することができます。
また、他の大学や教育機関、企業でも利用できるように検討も開始しております。これにより、より多くの 学生がAI 技術を活用した教育環境で学ぶ機会を提供し、AI を利用した新しい学習や仕事のやり方へのトラ イを容易にして、我が国における情報技術の発展に貢献していくことが期待されています。
INIAD 学部長である坂村健は、「この新しいシステムは、INIAD の教育革新をリードし、学生たちが最先端 の技術を活用して学びを深めることができる環境を提供します」と述べています。
また、学生からも「GPT-4 を使って研究や課題がスムーズに進められるようになり、大変助かっている」と いう声が聞かれています。
用語
- INIAD(イニアド): Information Networking for Innovation And Design の略で、東洋大学情報 連携学部のブランドネーム。情報科学と情報技術を中心として、他の学問分野や異なる背景を持つ 人々と連携する境界的な学問領域を研究し、それをもとに産業界や社会において多様なチームで活躍 できる人材を育成することを目指す。
- OpenAI: 米国にあるAI 研究機関。AI の安全性や透明性に関する研究を行っており、GPT-4 などの 大規模な言語モデルを開発しChatGPT などの形でサービス提供しています。
- GPT-4: OpenAI が開発した大規模な言語モデルであり、質問応答や文章生成など幅広いタスクに対 応しています。ChatGPT から無償で使えるのはGPT-3.5 モデルまでで、GPT-4 を使うには料金の 支払いが必要です。GPT-4 はGPT-3.5 より多くのデータで学習した巨大なモデルで、質問の認識も 回答の精度も飛躍的に向上しています。
- Slack(スラック): チーム向けのコミュニケーションプラットフォーム。チャット機能やファイル 共有機能、タスク管理機能などがあり、複数の人が同じプロジェクトに取り組む際に、コミュニケー ションを円滑にすることができます。
- API: Application Programming Interface の略で、ソフトウェア同士が情報を共有するためのイン タフェースを提供するものです。この場合は、API を利用することで、自分のアプリケーションの中 でGPT-4 の機能を利用することができるようになります。
背景情報
AI 技術が発展し、生成系AI が哲学のレポートも書けるようになった現代では、単に「~について書け」と いう単純な課題に対して、学生が生成系AI を使う前提で大学側も評価を考える必要があります。
INIAD では、生成系AI を活用することを制限せず、むしろ推奨しています。その理由は、生成系AI と対話 を繰り返すことで学生が自分の考えを深めることができると考えるからです。
例えば、ChatGPT にレポート課題を投げて最初に出てきた回答をそのまま提出しただけではいかにもな凡庸な回答 しかできません。
実際、同じ課題をAI を使って解かせても、どう設問するか、回答に対してどう聞き返して深掘りするかな ど、使う人が適切な対話ができれば──そして、最後のまとめにあたり自己の判断で取捨選択し、必要なら 補足や書き換えができるかまで、その人の能力により結果の質が大きく変わることをINIAD では、確認して います。
逆に言うと、ChatGPT を使うことを許すのは、学生が「楽ができる」ようにするのではなく、その結果の質 をより厳しく評価するということなのです。単に「正しい」だけでは低い評価にしかならず「ユニークな視 点がある」とか「深く検討している」など、より高度な結果を求めます。そのためにINIAD では、より深い 評価を行うための教育スタッフの負担を軽減できる評価のサポートAI のシステム開発も行っています。
このように積極的に利用するため、ChatGPT では課金しないと使えないGPT-4 モデルを使えるかどうかに ついて学生間の不公平が生じるという懸念があります。そこでGPT-4 モデルとプログラミング教育において 使えるAPI を、全員が利用できるようにする環境整備を行いました。
INIAD ではChatGPT をどう使うかのプロンプトエンジニアリングについて、新しい教科として教育してい く計画であり、今後ともINIAD では、学生がChatGPT との対話を通して自分の考えを深め、より高度な思 考力を身につけられるように、適切な環境・指導・教材・評価法・関連システムの研究・開発を積極的に進 めていきます。
連絡先
INIAD (東洋大学情報連携学部) cHUB (学術実業連携機構)・広報担当
電話: 03-5924-2600
メール: contact@iniad.org
ウェブサイト: https://www.iniad.org/
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