INIADのコンセプトである“連携”の実践の一つとして、INIAD cHUBは「東京公共交通オープンデータチャレンジ」(https://tokyochallenge.odpt.org/)を共催しました。首都圏におけるスムーズな移動と快適な滞在を実現するアプリケーションやアイデアを募集するコンテストです。
オープンデータにより“連携”する
オープンデータは、コンピュータが読み出せるデジタルデータの形でデータを公開することをいいます。オープンデータは、単にそれにより社会の活性化や効率化を図れるだけでなく、多様な参加者による数多くのチャレンジを可能にするイノベーションを生む基盤となります。そして、オープンデータを使ったコンテストを開催しイノベーションを促進することは世界的な潮流になっています。
公共交通機関に目を向けると、海外では国や自治体が公共交通の管理を一手に担うのが一般的です。たとえばロンドンにおいては、世界屈指の大都市にもかかわらずバス・鉄道・地下鉄・貸自転車までもロンドン市交通局が管理しています。これはオープンデータ化には大きなメリットで、首長の決断でオープンデータ化を迅速に推し進めることができます。一方日本では、交通事業者は早くから民営化し、多くの会社が複雑に乗り入れることにより、首都圏の公共交通は、世界一複雑といわれています。
「東京公共交通オープンデータチャレンジ」
多様な来訪者が訪れることが見込まれた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、首都圏を中心とした公共交通機関の情報をオープンデータ化し、アプリケーションやアイデアを募集するコンテスト「東京公共交通オープンデータチャレンジ」が、公共交通オープンデータ協議会の主催で開催され、INIAD cHUBも共催として参画しました。
コンテスト参加者に提供されたのは、鉄道・バスによる時刻表情報(静的データ)や車両の現在地を示すロケーション情報・運行情報(動的データ)、航空によるフライト時刻表(静的情報)や発着情報(動的データ)、フェリー事業者の航路情報、駅構内情報などがあります。ほかにも、流動人口データ、人口統計情報データ、シェアサイクル関連データなど、約60組織から提供された約300件の多種多様なデータセットが公開されました。
第1回のチャレンジが開催されたのが2017年。その後回を重ね2021年までに計4回開催されました。各回とも500〜1,500件の参加があり100件以上の作品が提出されました。年々レベルが向上し、優れた技術が注ぎ込まれた独創性に溢れたアプリケーションが多数誕生しました。
第4回チャレンジでは公共交通オープンデータが最大限に活用されることを目指し、開催期間中は時限的に営利目的での利用も可能としました。その結果、Google マップ、ジョルダン乗換案内、NAVITIMEといった国内の乗換案内サービスだけでなく、海外の事業者による利活用の事例もみられるなど、公共交通機関のイノベーションに大きな契機を与えました。
今後は、チャレンジを全国規模に拡大し、地方活性化に寄与することをテーマとした公共交通オープンデータチャレンジの実施が計画されています。
公共交通オープンデータ協議会
公共交通機関を、訪日外国人や障碍者・高齢者も含め誰もがスムーズに乗りこなせるようにしたい。その実現ために設立されたのが、坂村健(INIAD創設者(前学部長))が会長を務める非営利団体「公共交通オープンデータ協議会(略称:ODPT)」です。公共交通機関のオープンデータを核に先進的な次世代の公共交通機関の情報インフラ構築を行っています。
ODPTは2015年9月に首都圏の公共交通事業者とICT関連事業者など30団体でスタートし、その理念に賛同した全国の公共交通事業者や企業が続々と参画しています。2023年9月現在は117団体に支えられて活動しています。
2022年12月には公共交通データフォーマットの国際的な標準化に取り組んでいる非営利団体「MobilityData」と戦略的パートナーシップのMOUを締結しました。ODPTは国内の公共交通データのオープンな流通を一層推進するとともに、公共交通データのフォーマットについての国内の諸課題について、MobilityDataと連携しながら解決をはかっていくことを目指しています。